第162回国会 本会議 第22号
平成十七年五月十八日(水曜日)

○本日の会議に付した案件
 一、公的資金による住宅及び宅地の供給体制の
  整備のための公営住宅法等の一部を改正する
  法律案及び地域における多様な需要に応じた
  公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法
  案(趣旨説明)
 一、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律
  の整備等に関する法律案(趣旨説明)

○副議長(角田義一君)
 富岡由紀夫君。
   〔富岡由紀夫君登壇、拍手〕
○富岡由紀夫君 私は、民主党の富岡由紀夫でございます。
 民主党・新緑風会を代表し、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について質問させていただきます。
 今回の会社法案によって、有限会社が新設できなくなり、株式会社に統一されることになります。しかし、株式会社といっても、その実態は大きく二つに分類されると思います。公開会社と非公開会社であります。公開会社は株式を公開し、資本市場から広く資金調達を行います。したがって、基本的には所有者と経営者はイコールではありません。一方、非公開会社は資金調達を公募で行いませんので、所有者と経営者はイコールとなるケースが大部分です。この観点で日本の会社を分類すると、公開会社は約三千七百社で、会社総数二百五十五万社のうち、わずか〇・一五%です。現行の有限会社等を含め、非公開会社は全体の九九・八五%を占めております。
 このように、一言に会社と言っても、その資本形態が大きく異なるものが存在するのです。本会社法案によって新設会社は株式会社に統一されますが、資本形態の異なるこの二つの会社は基本的に分けて考えなくてはなりません。しかしながら、会社法案はこの分類が不明確であるように思われます。まず、分類に関する全体的な考え方について、概要を法務大臣にお伺いいたします。
 この分類によって、最初に公開会社について質問いたします。
 公開会社は、株主からの投資リターンの向上を求められることになります。公開会社の経営者は、経営効率を引き上げ、企業価値を向上させる義務があるのです。株主は、経営者が投資に見合うリターンを上げているのかをチェックします。そして、期待にこたえられない経営者であれば更迭をしなければなりません。しかし、我が国の公開会社においては、一般株主が経営者をチェックするための情報が制限されており、それ以上に、経営者の責任を追及することは非常に困難であると言わざるを得ません。
 一番の原因は、株主総会の形骸化であります。日本の公開会社の株主総会は、安定株主と言われる大株主が事前に書面投票又は委任状提出を済ませており、最初から会社側提案が承認されることが決まっています。商事法務研究会の調査では、安定株主比率が五〇%以上の会社が全体の半数以上になっております。
 公開会社における大前提となる株主総会が機能していなければ、会社法を幾ら整備しても意味を成さない部分が多いのではないかと思います。株主総会を形骸化させている原因である安定株主に対する問題については、今回全く対処がされておりません。安定株主問題については放置しておき、一般株主の権利は無視し続けるのか、株主総会を形骸化したままで会社法を絵にかいたもちのままにしておくのか、法務大臣のお考えをお伺いいたします。
 続いて、コーポレートガバナンスについて質問します。
 社長の多くは、取締役や監査役を選ぶだけでなく、社外取締役や社外監査役も選任します。社長は自分の意にかなう人を選任し、意にかなわない人はもとより選任することはありません。その結果、選任される役員は社長の顔色だけを見ているイエスマンばかりとなり、経営の取締りや監査は形骸化しています。経営のチェックなど機能しないのが実態です。社外取締役や社外監査役を導入すれば経営のチェックができるという考えは、昨今の続く企業不祥事を見れば空想にすぎないと言わざるを得ません。
 これも、本来であれば株主総会で役員の選任をチェックできるはずですが、株主総会が形骸化しているため機能しておりません。株主総会が機能している会社は別として、株主総会が形骸化している会社においては役員選任のチェックに対する対策はどのようにお考えなのか、法務大臣にお伺いいたします。
 また、本法案により内部統制システムの構築が義務化されましたが、内部統制をする人員、システムが会社に人事権を持たれ、会社から報酬をもらうイエスマンでは実質的な統制など不可能です。内部統制システムを機能させるために、具体的にはどのような形骸化防止対策をお考えなのか、法務大臣にお伺いいたします。
 次に、企業結合法制について質問します。
 昨年、UFJ銀行は三菱東京フィナンシャル・グループに優先株を発行した結果、UFJ銀行の持ち株会社の株主が事実上の権利を奪われました。現在の持ち株会社制度においては、持ち株会社の株主は権利を奪われたことに対して子会社の役員を代表訴訟できません。多重的代表訴訟が認められていないのです。持ち株会社制度が創設される時点でも、企業結合法制の欠落は指摘されておりました。実際に問題が発生している現在、企業結合法制の整備をしない理由を法務大臣にお伺いいたします。
 次に、MアンドAについて質問します。
 MアンドAといっても、これには良いMアンドAと悪いMアンドAがあります。会社の経営効率と業績を向上させ、企業価値を高めることにより、一般株主にとって投資リターンの向上が期待できるものは良いMアンドAと言えます。これは単純に拒否すべきものではありません。しかし、中には、企業買収後に解体し切り売りするなど、企業価値を向上させるとは言えない悪いMアンドAが存在します。これに対しては当然防衛しなくてはなりません。
 重要な点は、この良いMアンドAと悪いMアンドAの判断でございます。この判断を経営者だけに任せておいてよいのかが問題となります。経営者は保身の問題があり、冷静な判断は困難でございます。客観性を持たせるためには一般株主の判断を優先すべきであります。
 本法案により、強制転換条項付株式、新株予約権、拒否権付株式等のMアンドA防衛手段が導入しやすくなります。私は、これらの防衛手段については株主総会で丁寧な説明がなされ、一般株主の納得の上で導入が図られるべきであると考えております。防衛手段を導入してもよいのか、その発動を経営者に授権してよいのか、十分な説明がなされるべきです。
 ここで問題になるのが、やはり株主総会の形骸化です。
 特別決議案件でも、定足数を三分の一に下げておけば、安定株主比率が九分の二、すなわち二三%以上あれば理論的には会社側提案が承認されてしまいます。安定株主比率が三〇%以上の公開会社が八割を超える現状において、ほとんどの会社はMアンドA防衛手段を簡単に導入できるのです。
 株主総会が形骸化している状態でのMアンドA防衛手段の導入条件緩和が一般株主軽視につながらないということをどう保証するのか、経済産業大臣にお伺いいたします。
 関連して、合併対価の柔軟化が一年施行延期されました。しかし、合併するかしないかは取締役会、株主総会の議決を必要とし、その際の合併対価が何であろうと、MアンドA防衛手段とは何の関係もありません。一年延期する意味がどこにあるのか、経済産業大臣にお伺いいたします。
 次に、投資環境について質問します。
 政府は、貯蓄から投資へと、個人資産の運用を投資へ向けようとしています。しかし、現状を見ると、いわゆる一般の個人は怖くてとても資産を投資で運用できる環境ではありません。どれだけ多くの人が投資に失敗し損失を出しているか分かりません。原因として、投資環境の複雑さと情報の閉鎖性があると考えます。会社法の関連でいえば、種類株や新株発行予約権の発行、ましてや先ほどのMアンドA防衛手段が導入された場合、もうほとんどの一般国民はお手上げです。一部の企業が導入している株式分割による意図的な株価上昇を利用した資金調達に泣いた一般投資家がどれだけいるか。とてもではないですが、安心して投資できますよと株式を一般国民に推薦できる状況ではありません。投資環境の複雑さと情報の閉鎖性が与える投資拡大への影響についてどのようにお考えなのか、金融担当大臣にお伺いいたします。
 続いて、非公開会社について質問いたします。
 会計参与制度の導入についてお伺いいたします。
 会計参与は、決算書の作成に責任を負い、社外取締役と同等の責任を負うことになります。取引銀行などは会計参与に連帯保証を要求することも考えられます。そのことが会計参与の普及に影響を及ぼすのではないかと思いますが、この点について金融担当大臣のお考えをお伺いいたします。
 次に、最低資本金制度が廃止されること、休眠会社の整理対象期間が五年から十二年になることにより、過去の実績から休眠会社や名目だけの株式会社が大幅に増加することが見込まれますが、これらについてやむを得ないと考えるのか、法務大臣にお伺いいたします。
 最後の質問でございます。
 現行の商法においても株式会社は決算公告を義務付けられていますが、これを履行している企業はごく一部です。大多数の株式会社においては、形骸化しているにもかかわらず、罰則が執行されることはないと伺いました。最低資本金制度が撤廃されると、会社の資本や信用力を判断する上で決算公告の重要性が高まります。会社法の施行に伴い、罰則を厳格化するお考えはないのか、法務大臣にお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣南野知惠子君登壇、拍手〕
○国務大臣(南野知惠子君) 富岡由紀夫議員にお答え申し上げます。
 まず、会社法案における株式公開会社と非公開会社の分類についてのお尋ねがありました。
 会社法案においては、公開会社とは、発行する株式について、その内容として譲渡について会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていないものがある会社を指すものとしております。ですが、これに要する株式譲渡制限会社ではない会社のことであり、株式上場会社という意味における公開会社に限られるものではございません。
 このように整理した理由は、取締役会設置義務の範囲、監査役の監査権限の範囲等、機関設計に関する基本的なルールについて、株式の譲渡制限がされているために株式構成の変動が少ない会社と、譲渡制限がされておらず、株主構成の変動が頻繁である会社との間で、その性質の違いに即して規律を分ける必要があったためであります。
 次に、株主総会の形骸化に関するお尋ねですが、株主総会における意思決定やチェック機能は、安定株主、一般株主の区別なく、株主全体の意思が反映されることが重要であります。
 したがいまして、現時点において、安定株主が多数を占めているということが直ちに株主総会の形骸化につながるとは考えておりませんが、株主総会の形骸化の防止は会社法制の重要な課題の一つでありますので、今後とも必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
 次に、役員選任のチェックに関するお尋ねですが、企業経営が健全に行われるためには、役員の選任手続が適正に行われることが重要であると認識しております。
 したがいまして、会社法案においては、再任される取締役の職務の成果など、選任が予定される役員候補者に関する情報提供の一層の充実などを通じて、役員の選任についての株主総会における議論が形骸化することがないような措置を講ずることを予定しております。
 次に、内部統制システムを機能させるためにどのような形骸化防止対策を考えているのかとのお尋ねがありました。
 会社法案におきましては、法令遵守を含めコーポレートガバナンスの確保のため、すべての大会社に対し内部統制システムの構築を義務付けることといたしました。今後、法務省でその具体的な内容を定める予定ですが、例えば、内部統制システムの形骸化に対する防止策として、監査役等の職務を補助すべき使用人に関する事項を定めるものとし、その使用人が取締役等から不当な干渉を受けることがないよう、その独立性がどのように確保されているかに関する事項なども定めるものとする予定であります。
 次に、企業結合法制の整備に関するお尋ねですが、企業グループに関する適切な規制を行うという観点から、いわゆる企業結合法制の整備は検討に値するものと認識しております。しかしながら、企業結合法制に対する対応は、国際的にもその手法及び内容も様々でありますし、現時点における拙速な規制強化はかえって利害関係の保護に欠ける事態が生じるおそれもありますので、今後とも、実務における問題の状況を勘案しつつ、適切な方策について検討を進める所存であります。
 最後に、最低資本金制度の廃止等により休眠会社や名目だけの株式会社の数が大幅に増加することをやむを得ないと考えるのかとのお尋ねについてですが、最低資本金制度の廃止等が休眠会社等の大幅な増加に直結するものとは考えておりませんし、仮に休眠会社等が悪用されたとしても、役員の責任に関する規定や法人格否認の法理等により適切に対処することが可能であると考えております。
 最後に、決算公告を行った場合の罰則についてお尋ねがありました。
 決算公告が重要であることは議員御指摘のとおりであり、会社法案におきましても、決算公告を怠った場合には百万円以下の過料が科されることとしております。もっとも、決算公告につきましては、関係者がその重要性の認識を深め、各会社が自発的にこれを行う環境をつくることこそが重要であり、そのような観点からの検討も必要であると考えておりますので、現段階においては、会社法案に定める以上の罰則の厳格化をする必要はないと考えております。(拍手)
   〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕
○国務大臣(中川昭一君) 富岡議員にお答え申し上げます。
 まず、防衛策の導入条件緩和が一般株主軽視につながらないことをどのように保証するのかというお尋ねですが、経済産業省では、昨年九月に企業価値研究会を立ち上げ、企業価値向上につながる合理的な買収防衛策について検討を重ねており、先月二十二日にはその内容を論点公開として公表いたしました。論点公開では、一般株主を含む株主全体の利益につながる防衛策とするため、防衛策を平時に導入し、その内容を開示することなど、合理的な防衛策の在り方を提言しております。
 経済産業省は、論点公開に寄せられる様々な意見を踏まえ、法務省と共同して合理的な防衛策に関する指針を策定することとしております。防衛策がこの指針に従って導入されるのであれば、一般株主の軽視にはつながらないものと考えております。
 次に、合併対価の柔軟化の一年延期についてのお尋ねですが、合併対価の柔軟化はそもそも友好的なMアンドAに使われる制度です。しかしながら、敵対的買収のケースでも、まず買収対象企業の株式を公開買い付けなどで買い占めた上で、合併に反対する経営陣を入れ替え、その後に合併対価の柔軟化を活用することは可能です。このため、こうした合併の前に行われる敵対的な株の買占め行為に対して有効な防衛策を講じることが可能となるまでは、合併対価の柔軟化の導入は見送るべきではないかとの懸念が出されております。
 こうしたことから、合併対価の柔軟化につきましては、我が国企業が買収防衛策を準備する期間を一年間確保した上で施行することとしたものと認識しております。(拍手)
   〔国務大臣伊藤達也君登壇、拍手〕
○国務大臣(伊藤達也君) 富岡議員にお答えをいたします。
 個人の株式投資の拡大に向けた環境整備についてお尋ねがありました。
 証券市場の公正性、透明性を確保し、国民が安心して投資できる環境を整備することは重要であると認識をしており、金融庁としてはこれまでも、平成十四年八月に公表した証券市場の改革促進プログラムに沿って、適正な情報開示を促進するためのディスクロージャー制度の充実や不公正取引を防止するための市場監視機能・体制の整備などの諸施策を講じてきたところです。さらに、昨年末に公表した金融改革プログラムにおいて、利用者保護ルールの徹底や金融市場インフラの整備の観点から、投資サービス法の制定や企業開示制度の一層の充実等を掲げたところであり、今後とも、本プログラムに沿って貯蓄から投資への流れが促進されるよう環境整備に努めてまいります。
 銀行が会計参与に連帯保証を要求するのではないかとのお尋ねがありました。
 金融機関の融資に当たって連帯保証を要求するか否かは、個々の取引状況に応じて当事者間の合意の下で定められるものであると承知をいたしております。しかしながら、金融庁といたしましては、金融改革プログラムにおいて不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達手法の拡充を掲げたほか、担保・保証に過度に依存しない融資の推進を金融機関に繰り返し要請しており、金融機関が安易に連帯保証を要求し、会計参与の普及に影響を及ぼすことはないものと考えております。(拍手)
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